Speak-YのRecovery Kitとは:役割とアクセスを復元する手順

Recovery Kitは、Speak-Yのチームワークスペースを作成した人が、ワークスペースの作成時に一度だけ保存するファイルです。中にはワークスペースのリカバリーキーが入っています。チームメンバーが暗号化パスワードを忘れた場合、このファイルを持っている人が、チームのチャンネルへのアクセスをその人に戻せます。ほかの誰にもできません。チャンネルの内容はエンドツーエンドで暗号化されており、Speak-Yはこのファイルのコピーも、いかなる鍵のコピーも保管していないからです。

つまりKitは、チームの保険であると同時に、最も慎重に扱うべきファイルでもあります。このガイドでは、中身は何か、どんなときに必要でどんなときに不要か、復元の操作をクリック単位でどう進めるか、ファイルをどこに保管するか、なくした場合に何が起きるかを説明します。背景にある暗号の仕組みはエンドツーエンド暗号化のチーム共有の仕組みで解説しています。ここでは、オーナーが何をすべきかに焦点を当てます。

Recovery Kitのファイルとは

JSON形式の小さなテキストファイルです。アプリはSpeak-Y-Recovery-Kit-Northwind-Sales.jsonのような名前を提案し、保存先を選ばせます。中には、ワークスペースの識別子、名前、作成日、そして鍵のペア、つまりワークスペースのリカバリーキーが入っています。

チャンネルが鍵を受け取るたびに、つまりチャンネルの作成時と、その後の鍵のローテーションのたびに、アプリはその鍵のコピーをもう一つ、リカバリーキーに対して暗号化します。これらのコピーはサーバーに置かれますが、ファイルがなければ読めません。リカバリーキーの秘密鍵側が存在するのはKitの中だけです。アプリにも、Keychainにも、サーバーにも保存されません。

ここから二つのことが導かれ、どちらもアプリ自体に明記されています。

ワークスペースのページでは、ファイルを開かなくても、それがこのワークスペースのものかどうかを確認できます。OverviewタブのRecovery KitカードにRecovery key fingerprintが表示され、復元の際には別のワークスペースのKitは拒否されます。

メンバーの新しい鍵、オーナーが持つRecovery Kitのファイル、それを通じて発行し直されるチャンネルキー
メンバーが新しい鍵を作り、Kitを持つ人がファイルでチャンネルキーを開いて、その新しい鍵のために封印する。サーバーが保管するのは封印されたコピーだけ。

実際に必要になるのはどんなときか

名前から想像するほど多くはありません。メンバーのチームキーは二つのものから導出されます。アカウントのメールアドレスと、初めてワークスペースを作成または参加したときに設定した暗号化パスワードです。Macはその結果をKeychainに記憶するため、日々の利用でパスワードを入力する人はいません。

起きたこと Kitは必要か すること
Macを新調または交換した。パスワードは覚えている 不要 サインインして同じ暗号化パスワードを入力する。同じ鍵が戻る
アプリからサインアウトした。パスワードは覚えている 不要 サインアウトするとそのMacから鍵が削除される。パスワードで戻せる
パスワードを忘れたが、古いMacはサインインしたまま まだ不要 鍵はまだKeychainにある。サインアウトするかMacを替えるまでチャンネルは使える
パスワードを忘れ、鍵もなくなった 必要 メンバーが新しいパスワードを設定し、Kitを持つ人がアクセスを復元する

つまり、ノートパソコンをなくしただけではRecovery Kitの出番ではありません。ノートパソコンをなくし、暗号化パスワードも忘れた場合が出番です。ワークスペースの設定ガイドがメンバーに暗号化パスワードを書き留めるよう求めているのも、このためです。これはアカウントのパスワードではなく、「パスワードをお忘れですか」のメールでリセットすることもできません。

Recovery Kitができることと、できないこと
Kitが応えるのは一つの状況だけ。暗号化パスワードを失ったメンバーである。個人の録音には関係せず、二度発行することもできない。

メンバーのアクセスを復元するには

順序が重要です。先にメンバーが操作し、次にKitを持つ人が操作します。

  1. メンバーが新しいチームキーを作成します。 自分のMacでサインインしてワークスペースを開き、Team encryption keyのブロックに新しい暗号化パスワードを入力して、Create team keyを押します。これが済むまでは復元する先がなく、アプリもそう伝えます。「This member has not announced a team key yet.」(このメンバーはまだチームキーを公開していません)
  2. オーナーまたは管理者がワークスペースのページを開きます。 サイドバーのワークスペース名の横にある ⋯ をクリックし、Edit workspaceを選びます。Overviewタブの右の列に、Recovery KitとRestore member accessの二つのカードがあります。
  3. Restore from file…をクリックします。 Restore accessのシートが開きます。
  4. Memberの一覧で対象の人を選びます。
  5. Choose Recovery Kit…をクリックし、ファイルを選択します。アプリはその場でファイルを確認し、「The Kit matches this workspace.」(このKitはこのワークスペースと一致します)と表示します。違うファイルは「This Recovery Kit belongs to a different workspace.」(このRecovery Kitは別のワークスペースのものです)と表示されて拒否されます。
  6. Restore accessを押します。 結果は「Access restored: 3 channel(s).」(アクセスを復元しました:3チャンネル)と表示され、チャンネルごとに1行が並びます。

結果が「Restored: 2, failed: 1 — retry later for the failed ones」(復元:2、失敗:1。失敗した分はあとで再試行してください)となった場合は、復元をもう一度実行してください。ちょうどその瞬間に鍵がローテーションされていたチャンネルは、失敗することがあります。ファイルから読み込まれたリカバリーキーは、操作の間だけメモリに保持され、画面に表示されることはありません。

二つのカードはオーナーにも管理者にも表示されますが、ファイルは保存した人、通常はオーナーの手元にあります。管理者が復元を実行できるのは、オーナーからKitを渡された場合だけです。

Recovery KitカードとRestore member accessカードが表示されたSpeak-YワークスペースのOverviewタブ
1 — Recovery Kitカード。Viewで説明と鍵のフィンガープリントが開く。2 — Restore member access。Restore from file…で復元が始まる。

復元で具体的に何が戻るのか

ワークスペースのすべてのチャンネルの現在の鍵が、メンバーの新しい鍵に対して発行し直されます。ワークスペース名を復号するワークスペースキーも同様です。履歴も含まれます。古いレコードも現在の鍵で読めるからです。

ボタンを押す前に知っておきたい点が三つあります。

Kitはどこに保管すべきか

オフィスの合鍵のように扱ってください。ただし一つ違いがあります。合鍵と違って、作り直せません。

  1. 作成したMacだけに置かない。 オーナーのノートパソコンと一緒に失われたKitは、何も復元できません。
  2. 暗号化されたものの中に置く。 パスワードマネージャーの添付ファイルや、暗号化されたディスクイメージです。ファイル自体にはパスワードがありません。
  3. 二か所に、一人の管理下で置く。 二つ目のコピーはドライブの紛失に備えるものです。共有フォルダやチャットにコピーを置くと、意味がなくなります。
  4. チームのチャンネルやメールには決して置かない。 ファイルと管理者の役割を手にした人は、すべてのチャンネルを読めます。
  5. 1年後にも見つけられるようにする。 元のファイル名のままにし、会社のほかの重要な秘密情報と同じ場所に、保管先を記録しておきます。
Speak-YのRecovery Kitを保管するための5つのルール
作成したMac以外に、暗号化して、一人の管理下に二つのコピーを置く。チャンネルやメールには決して置かず、1年後にも見つけられるようにする。

Kitをなくしたらどうなるか

日々の利用では何も起きません。チャンネルは動き続け、鍵が使えているメンバーは違いに気づきません。失われるのは復元という操作であり、取り戻すことはできません。ワークスペースのページに、新しいKitを発行するボタンはないからです。

その後でメンバーがパスワードを忘れた場合、現実的な方法はその人をワークスペースから削除し、もう一度招待することです。新しい招待では、公開チャンネルの現在の鍵が履歴とともに渡されます。非公開チャンネルは、各チャンネルのメンバーが追加するまで閉じたままです。

打つ手がないのは、二つが重なった場合です。Kitをなくし、しかも全メンバーがパスワードを忘れた場合です。アプリははっきりと述べています。「channel history cannot be recovered」(チャンネルの履歴は復元できません)。Speak-Yのサポートもここでは助けになれません。サーバーが鍵を持ったことは一度もないからです。

ほかの暗号化ツールではどう扱っているか

提供者がデータを読めない製品には、どれも同じトレードオフがあります。2026年10月9日時点で確認した内容です。

パターンはどこでも同じです。復旧が機能するのは、誰かが事前に備えていた場合だけであり、それを可能にする秘密は提供者ではなく利用者の側にあります。Speak-Yはその秘密を一つのファイルにまとめ、その保存を飛ばせない手順にしています。

チームワークスペースはSpeak-Y macOSアプリで利用できます。作成はProプランから可能で、チームメンバーはどのプランでも無料で参加できます。共有チャンネルの仕組みはSpeak-Y Teamsのページで、サーバーが何を保存するかはプライバシーポリシーで説明しています。

FAQ

Speak-YのRecovery Kitとは何ですか。

チームワークスペースを作成した人が保存する小さなファイルです。ワークスペースのリカバリーキーが入っており、すべてのチャンネルキーはこの鍵に対しても暗号化されています。このファイルがあれば、オーナーまたは管理者は、暗号化パスワードを忘れたメンバーにチャンネルキーを発行し直せます。Speak-Yはコピーを保管しません。

チームメンバーがMacをなくしました。Recovery Kitは必要ですか。

暗号化パスワードも忘れた場合にだけ必要です。チームキーはそのパスワードとアカウントのメールアドレスから導出されるため、新しいMacでサインインして同じパスワードを入力すれば、同じ鍵と同じチャンネルが戻ります。Kitは、パスワードが失われた場合のためのものです。

Recovery Kitでメンバーのアクセスを復元するにはどうすればよいですか。

まずメンバーが自分のMacで、新しい暗号化パスワードを使って新しいチームキーを作成します。次にオーナーまたは管理者が⋯ →「Edit workspace」を開き、「Overview」タブで「Restore from file…」をクリックし、メンバーを選び、Kitのファイルを指定して「Restore access」を押します。アプリは復元されたチャンネルの数を表示します。

Recovery Kitをなくすとどうなりますか。

日々の利用では何も変わりません。鍵が使えているメンバーはそのまま使い続けられます。ただし、ワークスペースのページからKitを生成し直すことはできないため、パスワードを忘れたメンバーをKitで復元することはできなくなります。Kitをなくし、さらに全メンバーがパスワードを忘れた場合、チャンネルの履歴は復元できません。

Recovery Kitは個人の録音も対象になりますか。

いいえ。Kitが復元するのは、一つのチームワークスペースのチャンネルへのアクセスだけです。個人の録音、ディクテーション、メモが対象になることはありません。